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ビデオグラファーの思考回路

動画撮影のセオリー&テクニックを解説

ビデオグラファーという職業を勝手に ”定義” してみた

 早速ですが、ブログのタイトルにもある「ビデオグラファー」という肩書きは知っていましたか?

 

 多くの方が、フォトグラファーと聞いたら「ああ、写真家のことね」とすぐに分かると思います。

でも、ビデオグラファーと聞いても「ビデオカメラマン…のこと?」といった感じで、すぐにはピンと来ない方も多いのではないでしょうか。

 

私も長い間、自分の肩書きを「映像作家」とか「映像クリエイター」とか「映像ディレクター」などと名乗っていましたが、いまいちどれもしっくりきませんでした。

 

それが今から10年前に、ブロードウェイなどで活躍するダンサーが集うダンスプロジェクトのPV制作を依頼されてNYに行った際、海外では自分のようなクリエイターのことを「ビデオグラファー/Videographer」と呼ばれているのを知り、ようやく自分の肩書きが ”定義” された気がして嬉しかった記憶があります。

 

 ビデオグラファーの定義

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Wikipediaでは…  

「映像作家(えいぞうさっか)は、映像作品制作を専攻する作家を総称する概念。映画監督CMディレクターCGクリエイターなどの分野がこれに含まれるが、各分野を複合して活動している者も多い。専任の脚本家放送作家などプランナーが映像作家と呼ばれる事はほとんどないが、CMやプロモーションビデオ、CGムービーなどでは映像作家が脚本家を兼任している事がほとんどである。ビデオグラファーVideographer)とも呼ばれる」

 となっていて、映像作家=ビデオグラファーという位置づけになっているようです。

 

またビデオグラファーは「コマーシャル、ドキュメンタリー、ライブイベント、短篇映画、教育映画、結婚式やプロモーションビデオなどの映像作品の制作、各分野を複合して活動している者も多い」

…とも書かれています。

 

機動力のある業務用ハンディカムとノンリニア編集の登場

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  1995年 9月にSONYから3CCDを搭載したデジタルビデオカムコーダー「DCR-VX1000」(上の写真)が発売されると、映像業界の撮影スタイルが変わり始めました。

機動性に優れ、当時としては驚愕の高画質で記録出来る、まさに画期的なデジタルビデオカメラの登場でした。

 

私はこのVX1000の後継機である「DSR-PD150」というカメラを所有していましたが、このカメラ一台で500本以上の記録映像を撮影し、かなりの額のギャラを稼ぐことが出来ました。

今の私があるのは、このカメラのおかげ…といっても過言ではございません。

SONY様、マジ感謝です!

 

f:id:kanchivideographer:20161212122829p:plain                             SONY DSR-PD150

 

 

長い間、映像制作は大がかりな機材と大人数でやるものと決まっていましたが、このような高画質なハンディカメラの登場で、映像の記録が単独で容易に行えるようになったのです。

 

それともう一つ。

デジタル時代を象徴する画期的な映像編集スタイルが生まれました。

ノンリニア編集」です。

 

ノンリニア編集についてはまた後ほど詳しく書こうと思いますが、それまで個人では絶対に不可能だった映像編集が、PCと編集ソフトで簡単に行えるようになったのです。

 

この小型の高性能デジタルハンディカムとノンリニア編集が世に出たことで、映像制作の敷居が一気に下がり、意欲的なクリエイターは単独で映画や放送レベルの映像を作ることが出来るようになりました。

 

結局、デジタル技術の進歩が「ビデオグラファー」という職業を生み出したのです。

 

ビデオグラファーとアニメーターの違い

これも突っ込んで分析すると、かなり深い考察になってしまうので、今回はさらっと書きます。

 

これから動画制作を目指す方々の中で、現実の様子をカメラで切り取る実写と漫画やイラストなどのようにゼロから作り出すアニメーションを、同じ映像として混同して考えている人が結構多く見受けられます。

 

表現ということでは確かに共通点も多いのですが、ビデオグラファーのマインドで気軽にタイトルバックのモーショングラフィックやアニメーションに手を出すと後々かなり苦労します。

逆にアニメーターが気軽に実写映像に手を出しても、思ったような作品に仕上がらずにストレスを感じることでしょう。

 

実写の場合、後に編集で様々なデジタルエフェクトカラーグレーディングを施して、素材のタッチを変えることは可能ですが、基本的にはカメラの前の「現実世界を切り取る」作業になります。

 

現実世界を切り取る…

これは言い方を変えれば単純に「記録する」…ということです。

 

記録といえば「ドキュメンタリー映画」のことかと思いますが、フィクションである映画でさえも実は「記録映像」です。

突き詰めていってしまえば、俳優がカメラの前で演技をしている様子をカメラでただ記録しているに過ぎません。

 

結局、実写の映像は記録ですから、撮影する前にはカメラの前に現実がすでに在るということになります。

 

一方、アニメーションは出発点がゼロベースです。

アニメーターの現実は、自らの頭の中にあるイメージです。

 

そこには現実的な時間軸は存在しませんし、物理的な制約がほぼない状態での創作活動です。

反対に、カメラの前の現実世界を切り取る実写映像は、多くの物理的な制約の中で進行していく作業になります。

 

ビデオグラファーは、その創作の多くを実写ベースの素材を撮影することからスタートさせます。

従って時間的制約、物理的制約の中で素早い対応力が求められます。

 

実写記録は、被写体を完全にコントロールすることは出来ません。

刻々と変化していく無常な現実世界を柔軟な対応力を駆使して、なんとか時間内に切り取らなければならないのです。

 

一方、アニメーターはある程度の制作費やスケジュールなどの制約はあるにせよ、実写ほど物理的制約は受けないので、描く対象を自らがコントロールすることが可能になります。

 

私も条件が厳しい仕事の場合に、タイトルバックに使用する簡単なアニメーションやモーショングラフィック映像を作ることもありますが、何もない画面を前にゼロからイメージを膨らますのは正直かなり苦痛です。

 

おそらく実写とアニメーションでは根本的に脳の使う部位が違うからでしょう。

 

その逆で、普段から自分のペースで対象物をコントロール出来ているアニメーターが、いきなりドキュメンタリー的な撮影の現場でカメラを持たされても、現実世界の物理的制約にかなり戸惑うのではないかと予想されます。

 

もしこの記事を読んでいる方で、ビデオグラファーという仕事に興味を持っているなら、自分が実写が得意か、アニメーションが得意かを意識することをオススメします。

それによって進むべき道が自然と決まってくるからです。

 

(稀に押井守監督のように、アニメーションと実写を平行して作っているクリエイターもいますが、出発点はどちらかに絞っていったほうが最短距離を歩めると思います)

 

まとめ

映像制作というカテゴリーにはかなり幅広いジャンルが含まれます。

その中でビデオグラファーの基本的な制作スタンスは「実写ベースの素材を編集して仕上げること」と考えて間違いないと思います。

 

では改めてビデオグラファーを定義してみると…

企画、撮影、編集、仕上げまでの工程を単独でマルチにこなす映像クリエイターで、映像素材は主に実写で記録したものを扱う

…になるかと思います。

 

アニメーターが映像のセオリーを解説している本

ビデオグラファーの制作術 (玄光社ムック)